アフリカ進出ストラクチャー(Risk Management編)

前回、アフリカ進出ストラクチャー(TAX編)について、アフリカ諸国が法人税がたかいため、節税方法についてご紹介いたしました。

今回は対アフリカ進出もしくは投資において、投下した資金が回収できるためのリスクマネジメントについてご紹介します。

前回説明の通り、豊富な資源と、人口増加等の要素により、アフリカ経済の成長は今後期待できます。しかし、

裁判制度の透明性、効率性、アクセスが追い付いていません。アフリカ諸国は長い間、未発達の「法の支配」(Rule of Law) に悩まされています。トランスペアレンシーインターナショナル(腐敗認識指数)によると、世界で最も腐敗が多いされる10か国のうち、6国がアフリカ大陸にあります。

当然ながら、回収リスクを考慮すると対アフリカ投資はどうしても慎重になってしまいます。

それでは、どうすれば、アフリカ投資の回収リスクを低減できるのでしょうか。

まず、前回のTax編でご説明したとおり、アフリカ現地に会社をおき、その親会社もしくは関連会社をアフリカ国外におき、そちらの法人に資金を貯める事です。節税対策が可能になるのど同時に、資金をアフリカ国外に貯める事でリスク回避になります。また、ジョイントベンチャー(JV)形式で進出するなら、アフリカ国外のオフショア法人の株式持分をJVパートナーと共同保有することも選択肢です。

それでは、アフリカ国内で紛争が発生した場合に投資回収を容易にする方法はあるのでしょうか。アフリカ国内の企業と契約する際、契約書に紛争事項国際仲裁(International Arbitration)を選定することをお勧めします。国際仲裁機関は、アフリカ国内の機関でも問題ないですが

英国、シンガポール、香港の国際仲裁機関を選任する事をお勧めします。

国際仲裁条項が契約書に記載されていたら、あらゆる紛争発生後は、国際仲裁機関にて仲裁判断が下るため、アフリカ現地の裁判所を介す必要はありません。要するに、腐敗による裁判手続き遅延リスクを解消する事になります。

国際仲裁機関にて仲裁判断が下れば、それを元に、アフリカ各国にある裁判所に行き、執行Enforcement申請をする事になります。実質的な裁判は既に仲裁機関にて完結しているため、執行に関する事務的手続きのみを現地アフリカ裁判所にお願いする事になります。国際仲裁を使用することで、回収リスクを軽減することができます。

アフリカ進出ストラクチャー (TAX編)

豊富な資源と、人口増加によりアフリカ経済の成長は今後期待できるため、今後アフリカ諸国へ投資・進出する企業はより一層増加すると予想します。資源、人口増加以外でもIT技術のハブとなりつつあるのが、ナイジェリアやケニアを含む東アフリカ連合(East Africa Federation)です。また、エジプトや南アフリカも、引き続き外国人にとってビジネス環境が良好であると考えます。

しかし、アフリカ進出の弊害になるのは税金です。タックスヘブンの香港やシンガポールと比べると、アフリカ諸国の法人税、消費税、所得税は高いため、アフリカから(日本を含む)国外に税務を軽減するためのストラクチャーが非常に大切です。

国名法人税率(%)配当税(%)消費税(%)所得税(最高)(%)
ナイジェリア3027.524
ケニア3051630
エジプト22.510/51425
南アフリカ28201545
香港16.25/8.250017

また、海外送金をする際、収入が発生した国で税務が発生する国と、収入を実際受け取った国で税務が発生する国があるため、二重課税(Double Taxation)のリスクがあります。1つの対策として、二重課税回避条約(Double Taxation Treaty/ DTA)を締結する国々をストラクチャーに組込み事ですが、アフリカ諸国ではDTAの締結があまり進んでいません。

ナイジェリア https://firs.gov.ng/tax-treaties/

ケニア https://www.treasury.go.ke/agreements/
2つ目の対策は、以下の様にアフリカ諸国に設立された法人から、ドバイ、モーリシャス、セイシェル、ケイマン諸島、英国バージン諸島などの域外収益に課税されない国・地域にオフショア法人を設立し、口座開設をすることです。このようなオフショア口座に送金することで、税務を圧縮することが可能です。 オフショア法人の設立、税務対策、法人口座開設は弊社までご相談下さい。

【海外銀行口座】 架空請求・誤送金の対処法

ウクライナ情勢に影響されたのか不明ですが、トヨタ自動車関連会社の小島プレス社事件を見るように、詐欺的行為が増えています。架空請求や誤って海外送金した際の解決方法について、本書にてご紹介いたします。

1)架空請求による資金流出

架空請求等の詐欺的行為により、海外送金にて会社資金が流出した場合はどのような対処法があるのでしょうか。

まず、民事的措置ですが、裁判を提起することで、民事的に金銭回収もしくは損害賠償請求を行うことは、理論上は可能ですが、相手が特定できないため、非常に困難です。

それでは、刑事的措置についてですが、まずは警察通報することになります。ここで、重要なポイントになりますのは、実際にその国の警察管轄にて欺罔行為が行われていたか(もしくは、被疑者が住んでいたか)がポイントになります。言い換えれば、その国のどの警察管轄が関連するかを特定しないと、門前払いにされてしまいます。警察への通報する際、以下の書類が必要になります。

(1)請求書のコピー (架空請求の証拠)

(2)送金記録 銀行口座番号が記載されているもの

(3)メールや請求書

被害金額が1億円くらい大きくなると、国際刑事警察機構(インターポール)の関与が考えられます。同様案件がある場合に合算されたり、個々の担当警察官の判断になります。 

2)誤送金の組み戻し

それでは、ご自身がインタネットバンキングで送金したのですが、送金先を間違っていた場合はどのような対処方があるのでしょうか。

法的整理をしますと、本来、資金受領するべきでない者が受領すると不当利益を得ていることになります。法的措置として、受領者に対して不当利得返還請求 (英国法 Disgorgement of Profits) を起こす事が可能です。しかし、実際のところ、受領側は受領意図があったわけでもないので(そもそも不当ではないので)、組み戻しを不合理に要求することができません。弁護士費用を勘案すると現実的ではないかもしれません。

他方、取引根拠がないのに資金受領をすると、受領した会社での会計処理が困難になります。また、アンチマネロンの観点から、送金元を確定する必要がありますので、特に金融機関等の大企業になると、誤送金を受領した場合は返還せざるを得ません。

架空請求や誤送金の対処法につきましてVisence Professional Services にご相談下さい。

クロスボーダー債権回収に係わるリスク管理

世界的な景気後退より、売掛金等の債権回収が困難になっているというご相談が多くなっています。海外で債権回収について、どのような手続きがあるのでしょうか。

結果からお伝えしますと、「債権回収」に関する教科書があるわけでもなく、必ず回収することができる確立した手法や法制度はございません。

従いまして、ビジネス性と法律手段を上手くバランスをとり回収手段を検討する必要があります。

以下は、債権回収の手段について検討する際に考慮する点です。

  • 債務者との今後のビジネス関係について精査する必要があります。もし、ビジネス関係を継続するのであれば、緩やかな対応が必要になります。

  • 経営難の債務者を精神的に追い込むと、自己破産や高跳びする場合があり、回収不能となる場合があります。なるべく感情的にならず、債務者状況を理解し、慎重な対応が必要です。

  • 債権回収業者や弁護士に委託することは可能ですが、かえって債務者の感情的を逆立て、紛争がエスカレートする場合がありますので注意が必要です。

  • 債権回収に係わる法的手段は、原則的には「最終手段」になりますので、法的手段実行後は関係修復は不能と考えます。

  • 未払いの催促だけでは解決策を見いだせないので、未払い以外の責任追及を精査する必要があるます。例えば、債務者との資本関係があれば、会社法上、債務者が取締役としての義務がある場合があります。また、株主として帳簿閲覧権を行使することも可能です。


上記から、債権回収は非常に難しいプロセスであることがわかります。従いまして、契約締結時並びにビジネス関係を継続する上で、回収できなくなることを想定してリスク管理を行う事が重要です。契約締結時のリスク管理で有効なのは、契約書に紛争解決方法として「国際仲裁」を記載しておく事も有効です。

以下は、海外における一般的債権回収手段のステージです。 債権回収につきまして、Visence Professional Services (https://visence.info/) にご相談ください。

非上場投資信託の投資商品流通に関する 香港証券先物委員会(SFC)と香港香港金融管理局(HKMA)Thematic Review テーマ別ジョイントレビュー実施について

2022年3月1日、証券先物委員会(SFC)と香港金融管理局(HKMA)は、仲介業者による非上場投資商品の流通に関するテーマ別レビューを同時に開始しました。規制当局は、2021年10月の調査の初回結果を発表し、共通の懸念事項に対処するために監督を緊密に調整してきました。

Thematic Reviewは、エクイティリンクストラクチャード商品(エクイティ・アキュムレータおよびデキュムレータを含む)や社債などの人気商品の流通に係わる証券仲介業者の方針、取引手順、システム、および内部統制、ならびに管理監督が範囲となります。レビューの目的は、製品のデューデリジェンスの実施、適合性評価(Feasibility) の実施、およびクライアントへの情報提供の慣行を含む、行動規範に基づく適合性要件への仲介者のコンプライアンスを評価することです。

SFCとHKMAは、同時テーマレビューの結果を業界と共有し、必要に応じてさらなるガイダンスの必要性を検討します。

【リスクマネージメント】 国際仲裁機関の活用法 Part IV

今回は、国際調停 (International Mediation) についてご紹介します。

まずは、調停制度に整理しますと、調停者(Mediator)の役割は非常にシンプルなもので、関係者の問題を整理し、合意に到達するのを支援することです。場合によっては、当事者の契約締結し、紛争解決し、効果的なコミュニケーションを構築、関係改善の支援業務も含まれます。調停者は常に中立的な立場で、両者公平に扱います。

調停制度では、守秘義務が課せられ、当事者間で話し合ったり内容や、合意内容は、当事者全員同意なしに他人に開示されることはありません。調停は、紛争回避または解決を試みるために使用され、調停が合意に至らなかった場合でも、当事者は裁判所もしくは仲裁機関に判断よ委ねることができます。その場合、調停で何が起こったかについての詳細は、法廷審問で開示または使用されることはありません。通常、当事者は調停人選択を共同で行い、費用はされます。

調停のメリットは以下です。
(A) 訴訟や仲裁など、他の形態の紛争解決よりもコストがかからず、紛争を迅速に解決できる
(B) 調停が成功すれば、当事者間の関係が維持もしくは改善されます
(C) 個人的な感情に寄り添うことができ、敬意を表示することができます。
(D) 実質的な問題の核心に到達し、解決まで導きます
(E) 場合によっては、紛争が起こる前より、状況が改善する場合もあります

クロスボーダーの商取引においても、国際調停が使用されるケースが多くなってきています。 国際調停に関するシンガポール条約は、調停手続きによる和解合意が執行する事を可能にする国際的枠組みです。シンガポール条約 (Singapore Convention on Mediation) は、紛争当事者が国境を越えて和解合意を容易に執行および発動できるようにすることになります。クロスボーダービジネスにおける。紛を解決に、訴訟・仲裁以外のリスクマネジメント手段として有力です。当該条約は2019年に宣言され、現在55か国が加入しています。日本は未だ加入していません。

https://www.singaporeconvention.org/convention/about

【香港活用方法】 中国投資・進出について(2022年2月18日現在)

最近、海外事業を展開するビジネスマンから「米中対立が収束した後、中国経済圏はどのようになるか」という照会があります。国際政治情勢は欧州・アジアにて激化し、不確実性が高まっていますが、いつか収束するはずです。本稿では、地政学的リスクが収まることを前提に、事実に基づき、中国経済圏の展望について冷静に分析し、国際金融都市「香港」の活用方法とリスク回避方法についてご紹介いたします。

以下が中華圏・香港の状況です。

  • 中国経済圏は(国土が広くGDPの元データの質について諸説ありますが)世界第2位の経済圏で、現在鈍化傾向であるものの成長を続けています。
  • 不動産バブルが崩壊しましたが、主要都市の経済は成熟し、中国中央政府は「共同富裕」(Common Prosperity) による貧困層への資産分配(Wealth Distribution)を打ち出しました。
  • 米国シリコンバレーを見本に、深圳はAIやIOT分野のハブとなり投資活動が盛んになりました。欧米企業や日本企業がなかなか入り込めないのが現状です。
  • 政治制度について、時の政権により左右されますが、中国は「社会主義」に基づくため、欧米諸国や日本の「民主主義」制度とは異なります。台湾関係を含め、欧米諸国・日本との外交的な衝突は絶えません。

    香港について
  • 2014年頃より民主化デモがスタートし、2019年秋には激化しました。当局はデモ活動は外国勢力に影響されていると考え、外国勢力を排除するための「国家安全法」が施行されました。その後、扇動行為や国家反逆罪の取締が強化され、コロナ・オミクロン蔓延にも後押しされ、デモ活動は沈静化しました。
  • 英国との共同宣言(Joint Declaration)に基づく一国二制度は2047年に終了しますが、中央政府は以後の香港の在り方について一定の影響を与えています。英国より返還された1997年頃と同様に、多くの香港人が、北米、英国、欧州、日本、台湾などに移住しています。
  • Google 等の欧米企業や日本企業は、香港撤退・縮小を検討しますが、国際金融機関の香港拠点はアジアでの投資活動を支えています。他方、香港域内のデータセンターに対する投資は以前より増加傾向にあります。

上記事実に基づき、中立的なコメントをいたします。

メディア・ソーシャルメディアにより影響された感情論は、中国投資を避ける傾向にあるなか、対中投資の在り方(一部撤退、リスク回避手段等)を見直す必要がありますが、海外展開するビジネスが世界第二位の経済圏に(完全に)背を向けるのは、正しいビジネス判断であるのか著者は疑問を感じています。 

香港の隣町である深圳は、シリコンバレーや日本の技術力に大きく影響され、AI・IOTのハブとして成長しましたが、発展経緯、技術革新のスピードは、現地独特の商慣行や人材が寄与しています。中国グレイターベイエリア(China Greater Bay Area) 構想の、動向には今後注視していきたいです。https://www.bayarea.gov.hk/en/home/index.html

「国家安全法」は社会主義国的方針により運用されていますが、「扇動罪」、「国家反逆在」は諸外国の法律とそれほどかわりませんし、香港司法制度の独立性に影響は確認できません。しかしながら、諸外国は国家安全法の運用方法について良く捉えていないため、外交的かつ丁寧に説明し、両者が理解する努力が必要と考えます。同時に、中国大陸の歴史は外国勢力の侵略・影響によって大きく左右されたことから、政治判断やセンティメントに歴史観が影響することは注意すべき点です。

香港人の移住ブーム、一部国際企業の香港撤退は、1997年前(香港中国返還時)の光景と酷似します。しかし、移民ブームを経て、2003年SAR後、香港は中国のゲートウェイとして脚光を集め経済は急回復しました。香港経済にサイクルがあると仮定すると、幾何学的に2019年が経済縮小のどん底であり、そこから成長するかもしれません。コロナ並びに政治情勢が安定すれば、また人材が集まり発展する国際都市となる可能性はあります。

地政学的不安をチャンスと捉える方もいます。米国著名投資家でBridge Water Associates創設者である Ray Dalio氏 は、アリババに追加投資をしています。Dalio氏は親中派として知られますが、現況を機会としてして捉え中国事業家に恩を売る良いタイミングかもしれません。https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-25/dalio-says-u-s-divisions-pose-risk-for-2024-election-upheaval

中国経済が継続して成長することを想定すると、現段階で中国経済から完全撤退してしまうと、地政学的リスクが改善された際、ビジネス機会を逃す事になってしまいます。一方、地政学的リスクは、投資家やビジネスマンのコントロール下には無いため、代替案(Plan B)は必須です。

引き続き、ゲートウェイであり法人税の低い「香港」を活用するのが合理的ですが、監査義務のないオフショア法人(例 英国バージン諸島、ケイマン諸島、セイシェル)を香港にて「外国法人」登録することで、香港域内の口座開設が容易となります。香港が政治的に影響をうけることに備え、第三国の銀行口座に一定資金をプールしておくことでリスク回避が可能です。

地政学的問題が一日も早く解消されることを願います。香港法人・オフショア法人に関して、Visence Professional Services (https://visence.info/)にご相談ください。

【リスクマネージメント】 国際仲裁機関の活用法 Part III

The Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards (一般にニューヨーク条約として知られています)は、国際仲裁機関による判断が、批准国により承認並びに執行を約束するという内容の条約です。現在批准している国は以下です。

https://www.newyorkconvention.org/countries

1953年、国際商業会議所(ICC)は、国連経済社会理事会に対する国際仲裁判断の承認と執行に関する条約の草案を作成しました。その後、1958年春に開催された国際会議に提出されましたが、当時の議長はオランダの国連常任代表であるウィレムシュルマンと、後にコロンビアの国際法の第一人者であるオスカーシャクターが務めました。

ニューヨーク条約は画期的なもので、国際仲裁の礎となりました。今日において、多くの国が国際商事仲裁に関するUNCITRALモデル法に基づく仲裁法を採用していますが、ニューヨーク条約が柱となっています。

ニューヨーク条約の全文はこちらです。 https://www.newyorkconvention.org/english

国際仲裁は、国境を越えた商取引の裁判外紛争解決の手段です。裁判所の訴訟とはことなり、国際仲裁の主な利点は、仲裁判断が世界のほとんどの国で執行可能です。また、紛争を解決するための中立的なフォーラムを選択できること、仲裁裁定が最終的であり、通常は上訴の対象とならないこと、仲裁のための柔軟な手続きを選択できること、および機密保持が含まれます。

裁判により紛争が解決したら、勝者は判決を執行する必要があります。その理由として、敗者が自発的に支払う場合はないからです。敗訴した当事者の資産が裁判所の判決が下された国にない限り、勝者の当事者は、相手方が居住する管轄区域またはその資産が所在する管轄区域で裁判所の判決を取得する必要があります。判決が下された国と勝者が執行しようとしている国との間に裁判所の判決の承認に関する条約がない限り、勝者は裁判所の判決を使用して徴収することはできません。ニューヨーク条約によりこういった問題が解決することになります。

国際仲裁はクロスボーダーのリスクマネジメントにとって欠かせないもです。

【リスクマネージメント】 国際仲裁機関の活用法 Part II

調停(Mediation)プロセスと仲裁(Arbitration)プロセス(どちらのプロセスが最初に開始されたかに応じて、「med-arb」と「arb-med」と呼ばれます。) には、当事者間の和解を促すための調停者、もしくは紛争中の問題を決定し最終的かつ拘束力のある裁定を発行する仲裁人としての両方の役割を果たす同じ人物が介在します。

それでは、調停(Mediation)とはどのようなものなのでしょうか。

調停は、紛争解決プロセスとしての仲裁と混同されることがありますが、当事者によって選択された第三者による国内裁判所外の紛争解決手段です。調停実施には2つのアプローチがあります。

一つ目は、評価的アプローチで、日本などの大陸法圏で裁判官によって時々召集される和解会議に似ています。調停人は、促進的アプローチと同様に、各当事者と個別の会議を開催し、当事者に請求の費用対利益分析を実行し、和解につながる提案と妥協を行うように促すことができます。重要な点は、評価型の調停人は、各当事者の法的立場の相対的な長所と短所を指摘し、裁判官または裁判所が事件を決定する上で、どのように解決するかを中立的な立場から示します。

もう一つは、促進的アプローチで、英米法圏でしばしば活用される方式で、和解に達するために中立的な設定で当事者をまとめることを含みます。調停人は、最初に各当事者と個別の会議を開き、当事者が危機に瀕している商業的問題、特に到達したい商業的成果に焦点を当てるように促します。 そして彼らが妥協することをいとわないかもしれない点を検討します。この段階の後、ある部屋から別の部屋へと行き来することを含む合同会議が開催され、当事者は、調停人との個別の話し合いと交換の結果として、彼らが調停者であるかどうかを一緒に検討します。すべての当事者に受け入れられる妥協点を見つけることができます。通常、和解に達し、適切に文書化される前に、そのような調停セッションがいくつか必要になる場合があります。利点として、当事者がそれぞれの商業上の懸念を理解し、独立した第三者の存在下で、立場を害することなく、紛争に関する懸念を直接的な意見交換が可能です。

Med-Arbについて

仲裁手続きにおいて、仲裁人は中立性が担保され、当事者の立場についての追加の知識があります。対照的に、調停プロセスでは、当事者は追加情報を開示する必要があります。このため、ほとんどの国際仲裁規則では、手続きの中立性と公平性を維持するために、調停プロセスを仲裁または訴訟手続きから完全に分離されるようになっています。機密情報の開示や、既存の仲裁または訴訟手続きの公平性への潜在的な影響のために、Med-Arbは英米法圏では一般的に使用されていません。

しかしながら、アジアでは、Med-Arbは比較的よく活用される方法です。紛争の開始時にその意図の強力なメッセージとして正式な仲裁または訴訟手続きを開始します。実際、アジアおよびその他の大陸法の管轄区域の仲裁廷および裁判所は、正式な手続きの過程で、和解、特に調停を強く奨励ことがよくあります。

クロスボーダー紛争のリスクマネジメントにおいて、調停やMed-Arbを活用することは重要と考えます。