中央銀行デジタル通過(CBDC)に関する香港金融管理局(HKMA)の見解

香港の中央銀行である香港金融管理局(HKMA)は今週、香港発行の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の方向性について発表しました。

https://www.hkma.gov.hk/media/eng/doc/key-functions/financial-infrastructure/e-HKD_A_Policy_and_Design_Perspective.pdf

各地域においてCBDCを調査が進められています。例えば、スウェーデンの銀行家は現金の使用の減少を懸念しています。バハマ政府として、金融包摂のためのシステムを構築しようとしています。カナダ中央銀行は、個人向け預金の競争を激化させることを危惧しています。一方、中国人民銀行は、AlipayとWeChatが国のマネーサプライを支配していることを取り除こうとしています。HKMAも同様に調査を行ってきましたが、最大の貿易相手国である中国が発行するe-CNYとの関係性が注目されます。

他の政府によって提起されたこれらすべての問題は、香港にある程度存在します。しかし、HKMAの評価では、これらの問題は、小売業に焦点を当てたCBDC(「rCBDC」と呼んでいます)の導入を正当化するほどのものではありません。

HKMAの見解は以下になります。「rCBDCは現金のデジタル拡張を目的としていますが、その潜在的な需要は非常に不確実です」 「潜在的な保有者は、rCBDCの預金口座から資金を切り替える必要があるかもしれません。これは、商業銀行のバランスシートに影響を及ぼし、銀行の仲介を取り消すことにつながります。」

HKMAの分析によると、銀行の利ざやと収益性が圧迫される可能性があります。これは、消費者が銀行預金を預金が保管されているrCBDCに交換するにつれて預金が減少し、中央銀行が消費者にコストを追加する可能性があるためです。

また、HKMAはこのような懸念を表明しています。「銀行はまた、より高い貸付スプレッドを課すことにより、より高い資金調達コストを顧客に転嫁することを選択するかもしれない」 「資金調達コストと貸付スプレッドの増加が全体的な信用状態の引き締めにつながるという遠隔のケースでは、消費と投資活動は必然的に影響を受けるでしょう。」

HKMAは、これを、rCBDCが無報酬である可能性が高いため、実行される可能性が高いシナリオとは見なしていません。つまり、負の金利のようなインセンティブ構造がない場合です。

「銀行預金に対する価値の貯蔵庫としてのe-HKDの魅力も制限されるべきであり、したがって銀行の仲介リスクは管理可能でなければならない」とHKMAは述べました。

顧客対応側では、HKMAは、rCBDCがどのような問題点に対処するかを正確に把握していません。香港には、回復力があり効率の高い「便利な小売支払いオプションがたくさんあります」とのことです。大量採用は、これが解決する明らかな問題点がある場合にのみ発生します。

なぜCBDCが本当に必要なのかというこの実存的な問題は、テクノロジーを探求した多くの国で、以前は中央銀行によって提起されてきました。

アクセンチュア(ACN)のようなコンサルティンググループとその弱者は、テクノロジーの長所を称賛するホワイトペーパーに基づいてホワイトペーパーを作成する可能性がありますが、それが依然として必要かどうかは不明です。

このトピックに関するカナダ銀行の研究論文は、CBDCを介した福祉の分配からわずかな理論的利益があるかもしれないことを発見しましたが、プラットフォームの純利益に対する一般の認識は依然として課題です。

2021年にこのトピックについて話すと、米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長は、その必要性について以下のような懐疑的な見方を示しました。 「私たちにとって本当のしきい値の質問は、すでに非常に効率的で信頼性が高く革新的な決済システムを補完するために、新しいデジタル形式の中央銀行のお金を望んでいるか、必要としているのでしょうか?」

今後のCBDCの動向について注視していきます。

香港 アセットマネージメント事業に係わる規制について (その2)

アセットマネージメント関連のライセンス

それでは、ファンド販売にはどのようなライセンスが必要なのでしょうか?また、アセットマネージメントのライセンス(Type 9) では販売行為はできるのでしょうか?

ファンドを含む「証券」の販売、取次、決済をする場合には、Type 1 (Dealing in Securities)というライセンスが必要です(証券ライセンス)。よって、上場・私募ファンドを問わず、販売するのであれば、Type 1が必要になります。

また、ファンドを含む「証券」のアドバイスをする(投資顧問業)には、Type 4 (Advising on Securities)のライセンスが必要になります。

ファンド組成、一任運用、自社ファンド・アドバイスをするには、前述のType 9が必要です。

ここで、注意が必要なのは、SFCライセンス取得時は、以下の条件を付記されることが殆どです。

  • 顧客資産の管理は不可。よって、Custodian との契約が必要です。
  • 顧客は、適格機関投資家のみ

    香港証券先物法上の「適格機関投資家」とは
    800万HKD(同種ポートフォリオ)/ 4000万HKD(総資産)

ライセンス控除

香港証券先物法、幾つかの控除が認められています。即ち、ライセンスをもたなくとも一定の活動は認められています。

  1. 前述の通り、Type 9 ライセンスは、REIT、証券・先物契約のアセットマネージメント業務はType 9が必要ですが、付帯控除(Incidental Exemption)にて、Type 9を保持する会社が、既に扱っているファンドの販売行為(Type 1行為) やアドバイス・投資顧問(Type 4行為)をする事は認めれています。限定的ですが、Type 1 もしくはType 4ライセンスを保持しなくとも、既に管理しているファンドの付帯的・派生的な業務として、営業・販売・アドバイスすることが可能です。
     
  2. 機関投資家(Dealing with Professional Investors Exemption)。言い換えれば、機関投資家は、自身により投資判断を行うため、ライセンスをもった資産運用会社のライセンス必要ありません。
  3. 完全親会社・子会社の資産運用業 (Group Company Exemption) 。100%株式を保持する親会社もしくは子会社の証券を資産運用することは可能です。自己取引・自己投資(Proprietary Trading)にはライセンスを必要としません。100%の資本関係がある関連会社のみとの取引でしたら、不特定多数の投資家にサービスを提供するものではなく(則ち「業」とみなされないため)当該業務はライセンスを必要としません。
  4. 信託法人受託者による資産運用(Trust Company Exemption)。 投資家が信託会社に拠出し、TCSP (Trust and Company Service License) ライセンス保持の会社が受託者(Trustee) となり、Type 1(証券販売)、 Type 4(アドバイス・投資顧問)、Type 9(資産運用)することが認めれています。 

SFCライセンス取得に注意点と必要要件

A) 期間は8カ月ほど
B) Responsible Officer (RO) 2名を雇用
   => 現RO保持者の雇用を推薦
=>  1名、年収150万HKDくらい
C) ビジネスプラン・マニュアル作
D) Manager in Charge (MIC) の選任
E) 内部統制の構築する必要があります。
F) オフィススペース

香港 アセットマネージメント事業に係わる規制について (その1)

香港は世界有数の国際金融機関が拠点をおき、ファミリーオフィスやウェルスマネージメントビジネスを始めやすい国際金融都市として知られます。

しかし、ファンドなどのアセットマネージメント事業を行うには、関連規制を理解する必要があります。本書では、どのような場合ライセンスが必要となるのか、また一般的に使用されるファンドストラクチャーについてご説明いたします。

「証券」(Securities)とは

まず、出発点として、扱う商品により規制が異なるため、関連規制について整理します。
Securities and Futures Ordinance(「香港証券先物法」香港法第571章)Schedule 5、Part 2にて、「Asset Management (Type 9)」(資産運用業)の定義は以下の通りです。

  • 「不動産投資スキームに係わる資産運用」(所謂Collective Investment Scheme もしくREIT)或るは
  •  「証券・先物契約に係わる資産運用」

上記(a)もしくは(b)に該当する場合、Securities and Futures Commission  (「SFC」繁体字名 證券及期貨事務監察委員會)よりType 9というライセンスを取得する必要があります。

それでは、「証券」とはなんでしょうか? 香港証券先物法Schedule 1、Part 1において「Securities」は、(要約すると)上場・非上場問わず法人・組合 (Partnership /Limited Partnership)の株式、債券(Debenture) と定義しています。後述の通り、ファンド持分は株式もしくは組合持分になります。

では、暗号通貨は証券に該当するのでしょうか? もし、暗号通貨が証券に該当するのであれば、暗号通貨のアセットマネージメント事業はType 9ライセンスを取得する必要があるのでしょうか? 

現在のところ、香港並びにシンガポールを含む英国法(Commonwealth)圏にて、「証券」法理を説明する有力な判例がないため、米国の判例Howey( 328 U.S. 293 (1946))を基礎として、「Investment Contract(投資契約)」であるのかを分析するのが一般的です(Howey Test)。 米国では、Howey Testに基づき、米国SECから見解や訴訟にて、中央集権型(Centralized)の暗号通貨 もしくはセキュリティートークン(Security Token)は、「証券」と位置付けるのが定説となっています。また、米国以外の国々では、セキュリティートークンは間違いなく、証券となります。従いまして、セキュリティートークン以外は、証券に非該当なため、暗号通貨を扱うアセットマネージメント事業はSFCの管轄下にありません(SFCには監督する権限はありません)。言い換えれば、もし、暗号通貨事業にてSFC Type 9を取得することを希望されるのであれば、最低限1つのセキュリティートークンに関連するプロダクトもしくはファンドを組みこむ必要があります。

ファンドの募集・私募

それでは、組成されたファンドの販売方法と販売に関する規制についてご説明いたします。

組成されてファンドは証券に該当するため、不特定多数の投資家に販売(募集もしくはPublic Offering)するには、ファンドを上場する必要があります。上場するのは香港でなくても、どの国の取引所でも構いません。(非上場の不動産投資スキームの場合は、SFC登録)。

しかし、例外として、私募(Private Offering)があります。私募には明確なルールはないため慣例として、広告を禁止したり、免責条項を付記したり様々なコンプライアンスルールを順守する必要があります。そのルールを厳守しつつ、販売行為が適格機関投資家のみもしくは50人の投資家(1投資家500万香港ドル以内)に限定された場合、(上場してなくても)ファンドを香港投資家に対して販売することが可能です。上場には膨大な費用と時間がかかりますので、私募を活用することで効率的に資金調達することが可能です。

【要約】

【オフショア法人】オフショア法人株主として知っておくべき権利

法人の株主は単なる投資家では、ありません。会社法において、一定の権利は保護されています。

英国法圏の会社法において、株主の権利は、株式保有数もしくは割合により決まってきます。

本書では、英国法圏の代表として、香港のCompanies Ordinance(「会社法」)を参考に、株主保有数もしくは割合毎に株主としての権利を纏めます。尚、実際に権利行使をする際には、裁判手続きが必要となることについてお含みおきください。

株式保有数 1株式の場合
株式保有割合に関係なく1株でも株式を保有していれば、以下の権利を行使することが可能。
(a) 定款最新版(写し)の徴求 (97条)
(b) 最新の監査報告書(写し)の徴求 (430(1)条)
(c) 株式名簿に記載され、株券の受領(64条 並びに Schedule 180条)
(d) 株式名簿の検査(写しを取得する場合は有料)(631条)
(e) 議事録の検査 (620(1) 条)
(f) 買取請求権(9割保有株主に対して) (700条)
(g) 会社が株主に対して著しく不利益を与えた (724条)
(h) 株主代表訴訟 (733条)
(i) 配当権
(j) その他定款で定めた株主としての権利 (86条)
(k) ショートノーティスによる株主総会招集 (571(3)条)

2.5%保有
2.5%以上の議決株式(普通株式)を保有する株主には以下の権利があります。
(a) 次回年次総会での議案に関する通知(615条)
(b) 総会決議に関し、1000文字以内での意見 (580(1)条)
(c) 会社記録の点検 (740条)

5% 保有
5%の議決株式(普通株式)を保有する株主には以下の権利があります。
(a) 株主招集通知の不備による、特別決議の撤回 (91(1)条)
(b) 株主招集 (566(2)条)
(c) 評決要求 (591(2)(b)条)

5% 以上保有
5%の議決株式(普通株式)を保有する株主は、ショートノーティスにより開催された株主総会を拒否する事が可能 (571(3)(b)条) 10% 保有
10%の議決株式(普通株式)を保有する株主には以下の権利があります。
(a) 株式種類キャンセルのため裁判所へ提起する権利(182(1)条)
(b) 財務省への法人運営を調整するように申請 (section 840(2)条)

25%以上保有
特別株主決議の拒否

50%以上保有
普通株主決議の拒否もしくは可決

75%以上保有
特別決議の可決 (564(1)条)

【海外銀行口座】 架空請求・誤送金の対処法

ウクライナ情勢に影響されたのか不明ですが、トヨタ自動車関連会社の小島プレス社事件を見るように、詐欺的行為が増えています。架空請求や誤って海外送金した際の解決方法について、本書にてご紹介いたします。

1)架空請求による資金流出

架空請求等の詐欺的行為により、海外送金にて会社資金が流出した場合はどのような対処法があるのでしょうか。

まず、民事的措置ですが、裁判を提起することで、民事的に金銭回収もしくは損害賠償請求を行うことは、理論上は可能ですが、相手が特定できないため、非常に困難です。

それでは、刑事的措置についてですが、まずは警察通報することになります。ここで、重要なポイントになりますのは、実際にその国の警察管轄にて欺罔行為が行われていたか(もしくは、被疑者が住んでいたか)がポイントになります。言い換えれば、その国のどの警察管轄が関連するかを特定しないと、門前払いにされてしまいます。警察への通報する際、以下の書類が必要になります。

(1)請求書のコピー (架空請求の証拠)

(2)送金記録 銀行口座番号が記載されているもの

(3)メールや請求書

被害金額が1億円くらい大きくなると、国際刑事警察機構(インターポール)の関与が考えられます。同様案件がある場合に合算されたり、個々の担当警察官の判断になります。 

2)誤送金の組み戻し

それでは、ご自身がインタネットバンキングで送金したのですが、送金先を間違っていた場合はどのような対処方があるのでしょうか。

法的整理をしますと、本来、資金受領するべきでない者が受領すると不当利益を得ていることになります。法的措置として、受領者に対して不当利得返還請求 (英国法 Disgorgement of Profits) を起こす事が可能です。しかし、実際のところ、受領側は受領意図があったわけでもないので(そもそも不当ではないので)、組み戻しを不合理に要求することができません。弁護士費用を勘案すると現実的ではないかもしれません。

他方、取引根拠がないのに資金受領をすると、受領した会社での会計処理が困難になります。また、アンチマネロンの観点から、送金元を確定する必要がありますので、特に金融機関等の大企業になると、誤送金を受領した場合は返還せざるを得ません。

架空請求や誤送金の対処法につきましてVisence Professional Services にご相談下さい。

非上場投資信託の投資商品流通に関する 香港証券先物委員会(SFC)と香港香港金融管理局(HKMA)Thematic Review テーマ別ジョイントレビュー実施について

2022年3月1日、証券先物委員会(SFC)と香港金融管理局(HKMA)は、仲介業者による非上場投資商品の流通に関するテーマ別レビューを同時に開始しました。規制当局は、2021年10月の調査の初回結果を発表し、共通の懸念事項に対処するために監督を緊密に調整してきました。

Thematic Reviewは、エクイティリンクストラクチャード商品(エクイティ・アキュムレータおよびデキュムレータを含む)や社債などの人気商品の流通に係わる証券仲介業者の方針、取引手順、システム、および内部統制、ならびに管理監督が範囲となります。レビューの目的は、製品のデューデリジェンスの実施、適合性評価(Feasibility) の実施、およびクライアントへの情報提供の慣行を含む、行動規範に基づく適合性要件への仲介者のコンプライアンスを評価することです。

SFCとHKMAは、同時テーマレビューの結果を業界と共有し、必要に応じてさらなるガイダンスの必要性を検討します。

【香港活用方法】 中国投資・進出について(2022年2月18日現在)

最近、海外事業を展開するビジネスマンから「米中対立が収束した後、中国経済圏はどのようになるか」という照会があります。国際政治情勢は欧州・アジアにて激化し、不確実性が高まっていますが、いつか収束するはずです。本稿では、地政学的リスクが収まることを前提に、事実に基づき、中国経済圏の展望について冷静に分析し、国際金融都市「香港」の活用方法とリスク回避方法についてご紹介いたします。

以下が中華圏・香港の状況です。

  • 中国経済圏は(国土が広くGDPの元データの質について諸説ありますが)世界第2位の経済圏で、現在鈍化傾向であるものの成長を続けています。
  • 不動産バブルが崩壊しましたが、主要都市の経済は成熟し、中国中央政府は「共同富裕」(Common Prosperity) による貧困層への資産分配(Wealth Distribution)を打ち出しました。
  • 米国シリコンバレーを見本に、深圳はAIやIOT分野のハブとなり投資活動が盛んになりました。欧米企業や日本企業がなかなか入り込めないのが現状です。
  • 政治制度について、時の政権により左右されますが、中国は「社会主義」に基づくため、欧米諸国や日本の「民主主義」制度とは異なります。台湾関係を含め、欧米諸国・日本との外交的な衝突は絶えません。

    香港について
  • 2014年頃より民主化デモがスタートし、2019年秋には激化しました。当局はデモ活動は外国勢力に影響されていると考え、外国勢力を排除するための「国家安全法」が施行されました。その後、扇動行為や国家反逆罪の取締が強化され、コロナ・オミクロン蔓延にも後押しされ、デモ活動は沈静化しました。
  • 英国との共同宣言(Joint Declaration)に基づく一国二制度は2047年に終了しますが、中央政府は以後の香港の在り方について一定の影響を与えています。英国より返還された1997年頃と同様に、多くの香港人が、北米、英国、欧州、日本、台湾などに移住しています。
  • Google 等の欧米企業や日本企業は、香港撤退・縮小を検討しますが、国際金融機関の香港拠点はアジアでの投資活動を支えています。他方、香港域内のデータセンターに対する投資は以前より増加傾向にあります。

上記事実に基づき、中立的なコメントをいたします。

メディア・ソーシャルメディアにより影響された感情論は、中国投資を避ける傾向にあるなか、対中投資の在り方(一部撤退、リスク回避手段等)を見直す必要がありますが、海外展開するビジネスが世界第二位の経済圏に(完全に)背を向けるのは、正しいビジネス判断であるのか著者は疑問を感じています。 

香港の隣町である深圳は、シリコンバレーや日本の技術力に大きく影響され、AI・IOTのハブとして成長しましたが、発展経緯、技術革新のスピードは、現地独特の商慣行や人材が寄与しています。中国グレイターベイエリア(China Greater Bay Area) 構想の、動向には今後注視していきたいです。https://www.bayarea.gov.hk/en/home/index.html

「国家安全法」は社会主義国的方針により運用されていますが、「扇動罪」、「国家反逆在」は諸外国の法律とそれほどかわりませんし、香港司法制度の独立性に影響は確認できません。しかしながら、諸外国は国家安全法の運用方法について良く捉えていないため、外交的かつ丁寧に説明し、両者が理解する努力が必要と考えます。同時に、中国大陸の歴史は外国勢力の侵略・影響によって大きく左右されたことから、政治判断やセンティメントに歴史観が影響することは注意すべき点です。

香港人の移住ブーム、一部国際企業の香港撤退は、1997年前(香港中国返還時)の光景と酷似します。しかし、移民ブームを経て、2003年SAR後、香港は中国のゲートウェイとして脚光を集め経済は急回復しました。香港経済にサイクルがあると仮定すると、幾何学的に2019年が経済縮小のどん底であり、そこから成長するかもしれません。コロナ並びに政治情勢が安定すれば、また人材が集まり発展する国際都市となる可能性はあります。

地政学的不安をチャンスと捉える方もいます。米国著名投資家でBridge Water Associates創設者である Ray Dalio氏 は、アリババに追加投資をしています。Dalio氏は親中派として知られますが、現況を機会としてして捉え中国事業家に恩を売る良いタイミングかもしれません。https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-25/dalio-says-u-s-divisions-pose-risk-for-2024-election-upheaval

中国経済が継続して成長することを想定すると、現段階で中国経済から完全撤退してしまうと、地政学的リスクが改善された際、ビジネス機会を逃す事になってしまいます。一方、地政学的リスクは、投資家やビジネスマンのコントロール下には無いため、代替案(Plan B)は必須です。

引き続き、ゲートウェイであり法人税の低い「香港」を活用するのが合理的ですが、監査義務のないオフショア法人(例 英国バージン諸島、ケイマン諸島、セイシェル)を香港にて「外国法人」登録することで、香港域内の口座開設が容易となります。香港が政治的に影響をうけることに備え、第三国の銀行口座に一定資金をプールしておくことでリスク回避が可能です。

地政学的問題が一日も早く解消されることを願います。香港法人・オフショア法人に関して、Visence Professional Services (https://visence.info/)にご相談ください。

香港 新型コロナ景気刺激策 給与50%支給 (2020年4月11日現在)

香港政府は4月8日更なる景気刺激策として「防疫防抗疫基金」第2弾を発表しました。様々な刺激策がありますが、スタートアップ香港の読者に一番関連があるのは、雇用確保スキームと考えます。

政府は800億ドルを拠出し、資格を満たす雇用主に給与手当を支給し従業員を維持させるのが目的です。

◦ 従業員給与の50%の6か月分が政府支給。
◦ 給与HK$18,000 以上はHK$9,000。
◦ 必要に応じて数回の支払い。

以下が要件になります。

(1)雇用主の人員削減は不可。

(2)従業員に強制積立年金(MPF)積立てを行っていること。