書いている私は日本企業の香港進出支援を10年近く行っています。良く香港の会社設立は簡単にできるといいますが、どのようなステップが必要なのでしょうか。実際にその作業を説明したいと思います。
Certificate of Incorporation、香港法人設立には3ステップが必要
Certificate of Incorporation(会社設立証)の見本
香港法人の設立は主に下記3ステップを要し、法人設立を証明する書類としてCertificate of Incorporation(会社設立証)がCompanies Registry(会社登記所)より発行されます。Certificate of Incorporation(会社設立証)は会社設立時に一度のみ発行されます。会社の銀行口座開設、ビザ申請の場面で必要となります。
Certificate of Incorporation(会社設立証)の取得ステップ
Step 1: 法人形態と法人名の決定
Step 2: 申請書と規定書類の提出
Step 3: 手数料の支払い
以下、詳しく見ていくことにしましょう。
Step 1: 法人形態と法人名決定
法人形態のお話です。
設立できる法人は、株式による有限責任会社(Company Limited by Shares)もしくは、保証による有限責任会社(Company Limited by Guarantee)に大別されます。
- 株式による有限責任会社(Company Limited by Shares)– 株主の責任は、出資額及び会社定款により規定された未払込み出資額に限定される(ちなみに香港法人の大多数はこの形態になります)
- 保証による有限責任会社(Company Limited by Guarantee)– 法人メンバーの責任は、会社定款により規定された出資資産に限定される(NPOといった非営利団体の多くはこの形態になります)
次に、法人名のお話です。
法人名は任意の名称を設定できますが、下記の点に留意が必要です。
- 法人名は①英語のみ②中国語のみ③英語と中国語併記の3パターンのいずれかで設定可能ですが、英単語と中国語単語を混ぜて名称として使用できません。
- Companies Registryに既に登録されている法人名は設定できません。
登録済の法人名については、https://www.icris.cr.gov.hk/csci/で確認可能です。 - 中国語については、①康熙字典もしくは②辭海字典に記載のある繁体字(香港で使用される中国語)であり、 ISO 10646の国際コードに登録されている単語でなければなりません。
- 会社条例で規定されている“trust”, “chamber of commerce” といった単語の使用については、Companies Registryの事前承認が必要になります。
- “too like”(よく使用される単語)については承認手続上では考慮されませんが、他の多数の申請者からの反対意見を基に、Companies Registryは法人名変更を指示することができます。
- 他社のトレードマークや法人名を連想させる名称は、権利侵害による訴訟リスクがあります。
Step 2: 申請書と規定書類の提出
ここでは多くの法人が採用している株式による有限責任会社(Company Limited by Shares)について説明していきます。
法人設立の申請には下記3種類の書類を準備します。
- 法人設立申請書(Form NNC1)– https://www.cr.gov.hk/en/forms/specified.htm
から入手可能です。ハードコピーによる申請の場合は、その他必要書類を合わせて、14th floor of the Queensway Government Officesに提出します。またオンライン申請はhttps://www.eregistry.gov.hk/icrisext/apps/por01a/index?locale=en_US&m=nから行うことができます。 - 会社定款の写し
独自の定款を作成することもできますが、起草と会社条例への準拠確認のために弁護士費用もかかるため、通常はCompanies (Model Articles) Notice (Cap. 622H)で提供されている、会社条例に準拠したモデル定款を適用することになります - Business Registration Officeへの通知書
Business Registration(別名:Company Registration)はビジネス登録証になり、香港でビジネスを行う場合には、法人設立地、事業形態(法人、個人、パートナーシップ)に関わらず、業務開始の1か月以内に申請し、毎年更新する必要があります。詳細につきましては、以下の関連記事をご参照下さい。
https://visence.info/companyregistration/
香港法人は必ずBusiness Registrationを行わなければならないので、当該通知書が必要となります。通知書の入手や手続きにつきましては、上記①と同様になります。
Step 3: 手数料の支払い
法人設立の申請費用はHKD1,720になります。万が一申請が否認された場合でHKD1,425が還付されます(HKD295は事務手数料)。また通常、上記Business Registrationも同時に申請することから、こちらの費用と申請書を併せて準備しておかれると二度手間を省けます。
Certificate of Incorporation発行までの時間
申請した後の発行までの時間は以下の通りとなります。
申請方法 | 標準発行時間 |
14th floor of the Queensway Government Officesでの窓口申請 | 有効な申請後4営業日 |
オンライン(e-Registry) *Certificate of Incorporationは電子書類になりますが法的効力は物理的書類と同じです。 |
有効な申請後1時間 |
Certificate of Incorporationのまとめ
香港ではShelf Company(シェルフ・カンパニー)と呼ばれる、既にモデル定款が適用されている法人を最小限のコストで購入可能であり、法人設立にかかる手間や時間を節約することができます。
また今回はあくまで制度上の法人設立(つまり箱)とその証明書類としてのCertificate of Incorporationについてまとめておりますが、実際の営業開始までには、銀行口座開設も含め多くのステップがありますので、以下の記事にて香港での会社設立の全7ステップを解説しています。専門家でなくても自分でできるくらい、わかりやすく書いています。
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