私は日本人ですが、香港の公認会計士として働いています。香港の事業所得税は16.5%と安いことで有名ですが、今年さらに最初の課税所得200万香港ドルへの税率が8.25%と半額の軽減税率になることが発表になりました。今日はその概要と適用時の注意点を解説しますね。
2018年香港の事業所得税の減税概要
2017年10月、キャリー・ラム行政長官により、それまでの事業所得税率16.5%に加え、中小企業(SME)や新興企業への減税を目的に、軽減税率が初めて提案されました。
今回2018年3月29日付官報において軽減税率を含めた修正税務条例が公布されました。
軽減税率は2018/19課税年度から実施され、事業規模に関わらず、最初の200万香港ドルまでの課税所得の税率が50%軽減され、8.25%になります。残りの課税所得については、従来の税率(16.5%)が適用されることになります。つまり最大で16万5千香港ドルの減税になります[HKD2,000,000X(16.5%-8.25%)]。
実際の運用に際して、以下の点に留意が必要です。
- 1グループ1会社の適用
- 事業所得税の軽減税率適用会社の文書による指名
- 所得税の軽減税率の二重適用の禁止
以下にそれぞれ説明していきますね。
香港の事業所得税の減税は1グループ1会社の適用
今回の軽減税率は中小・新興企業の減税を目的としているため、グループ内での軽減税率適用会社を1社のみとすることで、多数の子会社を有する大企業グループが各子会社で軽減税率を適用し減税を享受できる可能性を排除しています。
事業所得税の軽減税率適用会社の文書による指名
グループ企業については、軽減税率適用会社を文書で指名する必要があります。つまり指名を行わない限り、特定の課税年度に軽減税率が適用されないことに留意が必要です。そのためグループ内の異なる会社を課税年度毎に指名することが可能だと考えられますが、修正条例ではこの指名の取消を認めていません。この取消不可が特定の課税年度もしくは会社を示すのかについては、今後はっきりされることでしょう。
所得税の軽減税率の二重適用の禁止
現行条例において、再保険事業、コーポレート・トレジャリー事業・航空事業は既に、税率の50%軽減が一定額の課税所得に適用されています。
一方、修正税務条例では、このような事業については、その対象から除外されているため、より税負担の低い条例を選択して適用することになります。
例えば、税務条例14Bに規定される現行の軽減税率を適用する場合は、最初の100万香港ドルが8.25%、残りが16.5%になるのに対し、修正税務条例では最初の200万香港ドルが8.25%となるため、税負担をより軽減することができます。
中小・新興企業の減税を行うことで、香港政府は、減税分の再投資を促進し、生産性の向上とイノベーションを通じて、よりよいビジネス環境の整備、ひいては香港経済を成長させたいと考えています。実際に軽減税率を適用する際には、軽減税率適用会社、より減税となる条例の適用について検討が必要です。何かご質問があれば、直接回答しますのでお問い合わせくださいね。